「骨盤の歪みが気になる」「骨盤がズレている感じがする」「骨盤が傾いている」など、最近では骨盤のズレや歪みを気にする方が非常に多くいらっしゃいます。テレビや雑誌では多くの特集記事が組まれ、CGやイラストなどで骨盤の歪みやズレが書かれてあるとそこに問題があるようになってしまいます。
しかし、決して「骨盤という骨自体はズレたり、歪んだり、傾いたりするものではありません」ただし、そのようにズレや歪みを感じるように錯覚を起こしてしまうことは大いにあります。
まずは「骨盤」というものを理解してもらうといいのですが、骨盤とは左右の寛骨(かんこつ)と真ん中の仙骨(せんこつ)の3つの骨が結合したものであります。この3つの骨が後ろにある仙腸関節(せんちょうかんせつ)と真ん中下の恥骨結合(ちこつけつごう)で関節として繋がれ、その周囲には強固な靭帯が無数に張り巡らされていることで、がっちりと固定されているものです。
強固な靭帯で固められている骨盤なのでこの関節自体は交通事故位の力でも加わらない限り、人間の筋力(数十キロ程度)が出す力ではほとんど動くことはありません。ですから、テレビや雑誌的なイラストみたいに骨盤がズレるということはあり得ません。
また骨盤の歪みということがありますが、何を持って歪むという事なのでしょうか。逆に言えば歪んでいないというのはどういうことなのでしょうか。「骨盤が左右で高さが違う」や「左右対称ではない」とかおっしゃる方がいますが、骨盤を形成する左右の寛骨自身は決して同じ形ではありません。ハマグリの貝合わせではないですが、そのようなきれいな左右対称ではないので、左右で違っていて当たり前なのです。左右きれいな対称ではないものを歪んでいるというのは少しおかしな表現になります。骨盤の傾きもほぼこれと一緒です。
ですから、解剖学的に物理的にまた現実的にも骨盤がズレたり、歪んだり、傾いたりすることはありえないのです。
ただし、これも大事ですが骨盤がズレたり、歪んだり、傾いているように「感じる」ことは充分にあります。つまり、現実的には起こっていなくても、これだけ雑誌やテレビで取り上げられれば、そのように感じてしまうのは仕方が無いことなのです。
そして、そのように感じるのは骨盤周囲の筋肉に問題が起こっている時です。人間は自分の身体がどの位置にあるのか、目をつぶっていても「手がこの位置にある」とか「足が上がっている」とかわかるものです。それは関節内ある位置センサーを脳が感じるからです。そして、その関節を動かすのは「筋肉」が行っています。例えば肘を曲げたときに曲げる筋肉が縮みこんでいることや伸びている筋肉が伸ばされていると脳が感じ取ることで、そこに繋がる関節に圧力がかかることで、位置センサーが働きます。
これを骨盤周囲の筋肉が左右で縮みこんでいる部分に差があれば片方の骨盤が高かったり、また歪んでいるようにを訴えても不思議はないのです。つまり、骨盤自体に「ズレ、歪み、傾き」があるわけではなく、その周囲の筋肉の縮みこみがあることで骨盤がズレたり、歪んだり、傾くように感じさせられてしまっているのです。人間の身体は2本足で立っていますから、左右に傾きがちになります。そうなれば左右の筋バランス、特に骨盤周囲にある腰方形筋や大腰筋、脊柱起立筋などが生活習慣と共に崩れていけば、骨盤の問題としてとらえてしまいます。
骨盤のズレ、歪み、傾きが気になる方はぜひ当院までご相談ください。